議会質疑・答弁

Parliament

平成28年2月定例会
「予算特別委員会 総括質疑」 

【質問項目】

  1. 1. 林業振興について
  2. 2. アパレル関連産業の振興について

1. 林業振興について

①林業における若者・女性の担い手確保、育成の取り組みについて
本格復興完遂予算として編成された平成28年度当初予算は、同時に、岩手への新しい人の流れを生み出すための「岩手県ふるさと振興総合戦略」を展開するために編成された最初の予算でもある。
復興の先にある「希望郷いわて」実現のためには、岩手の基幹産業である農林水産業をはじめ、各産業分野における若者・女性の担い手の確保、育成が重要であることを、県内でのさまざまな取り組み事例を踏まえ、これまで意見を申し上げてきた。
本県における平成26年度の林業就業者数は2、037人と、対前年比61人減、また、60歳以上の就業者の占める割合は42%と高どまりしており、林業現場における高齢化、人材不足が深刻な問題となっている。
戦後造林された人工林が本格的な伐期を迎えつつあることからも、担い手としての若者確保が急務である。
「いわて林業アカデミー」の設置に要する経費等として、平成28年度当初予算には「いわての次世代林業・木材産業育成対策事業費」が計上されているが、有識者、関連団体、事業体の代表者からなる「林業人材育成のあり方検討会」から昨年9月に提出された最終報告の内容等を踏まえ、林業に関する若者、女性の確保、育成についてどのように展開していくのか、知事の見解をお示し願う。

答弁
県では昨年5月に、林業技術者の育成のあり方等について検討する「林業人材育成のあり方検討会」を設置し、さまざまな観点から議論をいただき、9月に就業希望者が林業の知識や技術を体系的に習得できる養成機関の設置や、既就業者のキャリアアップ機会の充実に加え、林業就業者の待遇改善と林業事業体の経営力強化が必要という提言をいただいた。
この提言を踏まえ、県では新たな養成機関として平成29年4月から「いわて林業アカデミー」を設置し、既就業者のキャリア形成機会の充実を図るため、「林業技術センター」の研修内容を随時見直すこととしている。
また、林業関係団体と連携して、退職金共済制度や社会保険制度の普及などの就業者の待遇改善をさらに進めるとともに、森林経営実践力アップ研修を引き続き開催して林業事業体の経営力強化を支援するなど、総合的な人材確保対策に取り組み、林業を担う若者・女性の確保と育成に努めていく。

② 林業のイメージアップについて
秋田県では今年度から、そして来年度からは山形県、徳島県においても林業人材の養成機関が設置される予定であり、全国的に林業における若者確保のための取り組みが加速している。
若者の確保のためには、就労状況の改善は当然のことながら、林業そのもののイメージアップも大切であると考える。
平成24年度に開校した「京都府立林業大学校」では、ドイツ本社によるチェーンソーメーカーとの連携や株式会社モンベル、また、地元企業である帆布メーカーとの共同製作によるオリジナルウェア、バッグの製作など、業界の枠を超えた幅広い連携による林業のイメージアップを図っている。
本県においても、地域の強みである特色と技術を備えたアパレル企業とのコラボレーション、その他地域企業との連携など、地域全体を含めた盛り上がりによるイメージアップを図っていくことが重要と考えるが、知事の御所見をお伺いする。

答弁
「林業人材育成のあり方検討会」からは、林業就業者を確保していくためには林業就業者が安心して働くことができる環境の整備や、林業の就職先としての認知度向上も含めて、林業のイメージアップが必要という提言をいただいた。
県内では、機能性、安全性にすぐれた作業服等の着用が定着するとともに、高性能林業機械の導入等による作業の機械化が進み、林業の労働環境の改善が広く進んでいることから、県では林業のイメージアップを図るため、これらの情報とあわせて、自然の中でやりがいを持って働くことのできる林業の魅力を広く発信することが重要と認識している。
このため県では、関係機関と連携して、現場見学会や就業ガイダンスの開催、広報媒体を用いた積極的な情報発信を行うとともに、他県の事例も参考にしながら、地域企業との連携などの視点も含めて検討を進め、林業のイメージアップに取り組んでいく。

③ いわて林業アカデミーのあり方について
林業に対する県民の理解を深め、若者、女性の担い手確保を幅広く進めていくためには、実際に林業の現場にいる人材の育成のみならず、例えば山好き女子による「いわて林業女子会」の活動など、若者、女性の機運醸成を図る活動の活性化や、自伐林家などの身近な人材育成を図るため、「いわて林業アカデミー」は一般公開授業を設けるなど、県民に広く開かれたアカデミーとするべきと考えるが、当局の御所見をお伺いする。

答弁
本県では、大規模な木材加工施設や木質バイオマス発電施設等の整備が進み木材需要が増大している中、林業の現場で活躍できる人材のさらなる確保、育成が求められていることから、林業の知識や技術を体系的に習得でき研修型の人材養成機関として、アカデミーを設置することとした。
アカデミーでは、林業への就業を希望する若者が、将来的に県内事業体の中核を担う人材となっていくよう、平成29年4月の開講に向け、まずは必要なカリキュラム等をしっかりと検討し、運営を軌道に乗せていくことが重要であると考えている。
また、アカデミーの開設は、現在盛り上がりを見せている森林、林業に対する県民の関心をより高めることが期待されることから、御提言も参考にさせていただきながら、県民に開かれたアカデミーのあり方について検討していきたい。

④ いわて林業アカデミーのカリキュラムについて
進学する上で重要なのは、研修修了後、自分が望む就職先に安定的に就業できることだと考える。
先行して開学している他県の養成機関における就職率は100%に近いと伺っている。
本県において、林業に関心のある若者が卒業後スムーズに就業し、将来本県林業の中核的人材として活躍していくためには、就学中から地域の森林組合、林業事業体等との連携、インターンシップなど、必要とされる人材と研修内容のすり合わせなどの人材マッチングに向けた柔軟なカリキュラムの工夫が不可欠だと考えるが、当局の御所見をお伺いする。

答弁
アカデミーでは、将来的には県内林業事業体経営の中核となり得る人材を養成するため、産学官の連携のもと、林業に関する知識や技術の習得や、就業に必要な資格取得のための講習や実習に加え、林業事業体でのインターンシップなどを実施し、実践力を養うこととしている。
具体的な研修内容については、林業事業体等へのヒアリングや、有識者で構成される運営協議会からの意見を伺うなど、就業のために必要なスキルや、望まれる職業人像などの現場ニーズを把握した上で、効果的なカリキュラムの作成に努めることとしており、また、開講後も研修生を受け入れた事業体から引き続きヒアリングを行い、随時見直しを進めて充実を図っていきたい。

⑤ 再造林の取り組みについて
再造林の取り組みは、森林資源の維持、確保に不可欠である。
戦後造林された人工林の本格的な伐期の到来により、近々に利用可能な森林が多いということは、一方で若齢林の面積が少ないことを意味する。
林業、木材産業の継続的な発展のためには、まさに今、伐採利用と同時に再造林を進める必要がある。
「いわての森林づくり県民税」による再造林施策の実施については、課税の趣旨から困難であることを答弁されてきた。
県では昨年1月から、林業、木材産業関連団体等と再造林推進対策について意見交換を行ってきたと伺ったが、現在の本県における再造林の状況についての認識及び今後の取り組みについて、知事の所見をお伺いする。

答弁
県内では、大規模な木材加工施設や木質バイオマス発電施設等の整備が進み、木材の需要が増大している中、再造林面積は人工林伐採面積の3割にとどまっており、将来に向けて安定した森林資源を確保していくためには、着実に再造林を進めていくことが極めて重要であると認識している。
このため県では昨年10月、「岩手県森林組合連合会」などとともに検討会を立ち上げ、再造林に対する支援のあり方などについて、今年度末を目途に検討を進めてきているところである。
来年度には検討会での検討結果を踏まえて、さらに幅広い林業、木材産業関係団体の参画による協議会を設置し、団体による再造林支援策の構築を目指して検討を進めることとしており、県としてはこうした民間主導の取り組みを全力で支援していく。

2. アパレル関連産業の振興について

① アパレル産業の現状と「北いわてアパレル産業振興会」への展望について
「岩手県ふるさと振興総合戦略」の柱である「岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らす」、これらの政策推進のためには、人口減少社会の中で、特に若者や女性の雇用確保に戦略的に取り組むことが求められる。
産業振興の現状をどう捉え、これまで県北地域のみで力を入れてきたアパレル関連産業を、全県的な産業振興施策の中でどのように位置づけ、どのような目標設定のもとで取り組むつもりであるのか。
過日発足した「北いわてアパレル産業振興会」はオリジナルブランドも立ち上げたが、振興会の今後の事業展望とあわせて、当局の考えをお伺いする。

答弁
本県の産業振興の現状については、「いわて県民計画」に基づき、ものづくり産業の振興などに取り組んだ結果、本県の産業分野における県内総生産は、平成25年度で約3兆6,757億円となり、前年度比4.6%増と3年連続で増加し、1人当たりの県内総生産は、平成21年度から5年連続で増加しているところである。
アパレル関連産業の位置づけ等について、これまで県では、首都圏メーカーとのマッチング商談会を初め、「学校法人文化学園」との連携協定を締結するなど、さまざまな取り組みを実施してきたところであるが、御提言の具体的な目標設定までは、いまだ現時点では至っていないことから、今後こうした観点の強化を図っていきたいと考える。
また、昨年6月に設立された「北いわてアパレル産業振興会」においては今後、先に立ち上げたオリジナルブランドの「ブラッシュアップ」も含め、様々な活動を予定しているところであり、県としても来年度の組織体制において、本庁に総括課長級ポストを配置し機能強化を図ることとしており、振興会との活動とも連携して、全県的な政策の展開に向けた取り組みを進めてまいりたい。

② 業種間連携と人材育成について
岩手のデザイナーが企画、発信するデザインイベントとして「IWATE DESIGNDAY」が昨年11月に3年目を迎えて開催されるなど、デザインの分野でも盛り上がりを見せている。
そういった中、本県が強みを持つ、縫製を初めとする製造分野や伝統と技術を備え、高い市場シェアを有する「ホームスパン」などの地域産業との連携を図ると同時に、人材育成も進めていく必要があり、岩手県は昨年夏、「学校法人 文化学園と連携協定も締結したが、当局の御所見をお伺いする。

答弁
本県のアパレル産業においては、先日県北地域で開催されました「学生デザインファッションショー」を初めとする関係イベントの開催や、「学校法人 文化学園」との連携協定などにより、デザイン分野を含めた新たな広がりが見られるところである。
アパレル産業の振興には、本県が有する地域資源と伝統的な技術に育まれ、すぐれたデザインと高い知名度を誇っている「ホームスパン」などに代表される地域産業との連携も今後模索していくべきものと考えており、関係者の御意見を聞きながら、積極的に検討を進めていきたいと考えている。
また、持続的な成長を図っていくためには、デザインを含めた企画提案力や経営力を備えた人材が必要であることから、「学校法人 文化学園」の協力も得ながら、県内専門学校などと連携し、人材育成にも努めてまいりたい。

③ 今後のアパレル関連産業振興に対しての知事の戦略
来年度から初めてアパレル関係の課長を県庁の中に置かれるということで、大変期待はしているが、まだまだ見えていない部分もあると感じている中で、異業種間の連携が大事であると考える。
岩手県では「農業女子」、「林業女子」、「牛飼い女子」等に取り組んでいるが、それに限らず、例えば制服を作るなら岩手のアパレル工場と連携する、あるいはスポーツウエアをつくる工場もあることから、グルージャやビッグブルズ等の他業種と連携することで、岩手県民にもっともっと、アパレル工場があることを知っていただき、その工場がもっと大きくなることで、若者や女性が特に多い職場として、”もっと仕事したい”と思う場所になるのではと思っている。
最後に今後のアパレル関連産業に関して、どういった戦略をお持ちなのか、知事の御所見と、今後の意欲をいただきたい。

答弁
今回の二戸市における「北いわてアパレル産業振興会」のファッションショーにも参加をし、衣食住の衣の分野での地産地消というのも非常に大事だと感じた。
去年、ミラノの万博に岩手からも参加をしたが、イタリアでは食に関するスローフード、地産地消というものを大事にしながら、世界に誇れるイタリア料理が地域ごとにあり、そして衣に関しても、地域に根差した地産地消的で、伝統技術を生かしたものがファッションで世界をリードするようなものになっている。
食にせよ衣にせよ、そういったところを岩手も狙っていくべきだと思っている。
私もネクタイは地産地消を心がけているが、服全般について県民の皆さんにもっと地産地消的に地元で生産されている衣を利用していただきながら、地域に根差し、世界に通用するようなファッション、アパレルというものを岩手で育てていくことができればと思っている。

平成28年9月定例会
「決算特別委員会」

【質問項目】

  1. 1. 周産期医療体制と妊産婦支援について
  2. 2. 防災、減災対策としての森林整備について

1. 周産期医療体制と妊産婦支援について

① 県の周産期医療体制整備への取り組みについて
県では国の「周産期医療体制整備指針」に基づき、平成23年2月に「岩手県周産期医療体制整備計画」を策定し、対策を推進してきた。
また、四つの周産期医療圏を設定し、体制の整備に取り組んでいる。
分娩可能施設は県内32施設となっているが、施設のない市町村が22市町村あり、アクセス支援を行う市町村は増えてきたものの、その地域の妊産婦は域外への通院を余儀なくされている。
「日本医師会総合政策研究機構」の妊婦向け調査によると、産科医療については90%が満足と回答しているものの、産科医不足のニュースから、お産に不安を感じる人は78%という結果になっている。
こうした状況がある中、これまでの県の周産期医療体制の整備に向けた取り組み状況と課題について、どのように認識し、今後の施策をどのように実施していくのか、産科医数、助産師数、分娩取扱施設数の状況とあわせて知事の考えを伺いたい。

答弁
県内の産婦人科医師数及び就業助産師数については、平成22年と平成26年を比較すると、産婦人科医師数は94名から100名に、就業助産師数は349名から370名にそれぞれ増加している。
一方、分娩取扱施設数は、平成22年の40カ所から平成28年は32カ所に減少しており、また、低出生体重児等のハイリスク出産の割合が増加傾向にある。
このため県では、これまで県内に四つの周産期医療圏を設定し、医療機関の機能分担と連携のもと、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制の確保を図ってきたほか、医療機関と市町村が妊産婦等の情報を共有する周産期医療情報ネットワークの運用や、超音波画像による連携診断体制の構築など、ICTを活用した医療連携を推進し、周産期医療体制の充実に努めてきた。
今年度、新たな医療計画における周産期医療体制を検討するため、県医師会や関係大学、周産期母子医療センター等の医療関係者による検討組織を立ち上げたところであり、そこでの議論を踏まえて県の取り組みを進めていく。

② 産科医や助産師の勤務環境改善への取り組みについて 
医師数に占める女性の割合は年々増加しているが、中でも産科医に占める女性の割合は著しく増加しており、20代後半から30代前半においては60%を超えている。
先日、県医師会主催の女性医師や医学生との懇談会に出席したところ、育児がしやすい環境が整いつつある一方で、育児休暇取得のためのマンパワー不足の現状を挙げられ、女性医師への支援が急務との提言があった。
私は、地域偏在や医師不足の解消がなかなか困難ななか、周産期ネットワークの構築や、医師、助産師の勤務環境の整備が重要であると考えている。
そこで伺うが、産科医や助産師の人材確保や育成の状況、勤務状況の現状をどのように把握し、改善などに取り組んできたのか。
また、特にも女性の産科医や助産師に対してはどのように取り組んできたのかあわせてお伺いする。

答弁
産科医や助産師は分娩対応を24時間体制で行う必要があるが、産科医の不足やハイリスク出産の割合が増加するなど、産科医や助産師を取り巻く勤務環境は大変厳しい状況にあり、安全な出産に必要な人材や医療の質を確保していくためには、勤務環境を整備していくことが重要であると考えている。
御指摘のとおり、近年、産科医を中心に女性医師の割合が増加してきており、医師確保に向けては女性医師の就業支援も重要であることから、県では、夜勤時のベビーシッターの派遣や育児休業後の職場復帰研修、夜間保育や病児保育を行う院内保育所への補助を行っているほか、産科医や助産師も含めた医療従事者の勤務環境を改善するため、保健福祉部内に「岩手県医療勤務環境改善支援センター」を設置し、医療機関の課題に応じたアドバイザーや研修講師を派遣するとともに、勤務環境改善に係る設備整備等に対し補助等の支援も行っているところである。
また、助産師の人材確保や育成についても、看護職員修学資金の貸付枠を拡大し、その養成と県内定着に取り組んでいるほか、新生児蘇生法やハイリスク妊産婦ケアなどの実践能力の向上に向けた研修も行っているところである。
国においては、本年10月に新たな医療の在り方を踏まえた「医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」を設置し、医療を取り巻く環境の変化を踏まえた望ましい働き方についての検討が始まったところであり、これらの議論等も踏まえながら、引き続き、医療機関における勤務環境の改善の取り組みを支援していく考えである。

③ 妊娠・出産包括支援推進事業や産前産後ケアに対する取り組みについて 
核家族化、地域のつながりの希薄化等により地域で妊産婦やその家族を支える力が弱くなり、妊娠・出産・子育てに係る妊産婦等の不安や負担が増えている。
こうした中、国では各地域の特性に応じた妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目ない支援の充実を図ることを重点とし、県でも昨年から「妊娠・出産包括支援事業」を開始した。
先日、平成20年に世田谷区が開設した、全国初の医療機関ではない産後ケアセンターを視察した。
また、山梨県では都道府県では全国初となる産後ケアセンターを今年2月に設置。
本県では10月に民間団体が花巻市に産後ケア施設を開設している。
利用者の話などからニーズの高さがうかがわれている。
県の周産期医療を取り巻く環境の中で、妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援には、児童虐待防止にもつながる産前産後ケアの充実が必要と考えるが、「妊娠・出産包括支援推進事業」や産前産後ケアに対する取り組み状況の課題と今後の方向性について伺う。

答弁
妊産婦に対する支援について、母子保健法上では市町村の事務とされており、県では市町村相互間の連絡調整や、市町村に対する指導、助言、その他必要な技術的援助を行うこととされている。
市町村では、妊娠・出産に伴う健康診査や保健指導を実施しており、これらに加えて、盛岡市と遠野市では妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供する「子育て世代包括支援センター」を設置し、国の補助事業を活用して母子保健や育児に関する相談支援事業や妊婦教室、授乳、育児指導等を実施している。
県では、母子保健事業に従事する市町村の保健師等を対象とした研修会や、産後うつ事例検討会を開催するなど、妊産婦の支援を担う人材の資質向上に努めているところである。
妊産婦の心身の安定や児童虐待防止には、産前産後のケアが有効であることから、市町村の取り組みを一層拡大する必要があると認識している。
国においては、「子育て世代包括支援センター」を平成32年度末までに全国の市町村に設置する方針を示しており、これらの動きを踏まえて、県においては先進事例の紹介や研修会を開催するなど、引き続き取り組みの拡大に向けて支援していく考えである。

④ 県内の不妊治療に対する支援について
体外受精で産まれる子の数は、2014年は過去最多の4万7、322人であることが日本産科婦人科学会のまとめでわかった。
約21人に1人が体外受精で産まれることになり、治療件数も過去最多を更新している。
不妊で悩む夫婦も増加傾向にあり、多くは母体の高齢化が原因と言われているが、20代の不妊も増えており、また、不妊の原因の半分は男性にあるという状況である。
当事者が声に出しにくく、目には見えづらい妊活。
不妊治療に対する社会や職場の理解が必要と感じている。
本県は生殖医療の専門医や医療機関が少なく、専門医を養成する環境も不十分で、多くの患者が県外での治療を余儀なくされている現状であるが、本年度から岩手医科大学に生殖医療専門の先生を迎え、不妊治療に携わる医師、不妊カウンセラーの養成、卵子の老化など晩婚化による不妊リスクの啓発などが期待されている。
そこで伺うが、県内の不妊治療の現状と課題についてどう認識されているのか。
平成27年度から開始した男性不妊治療の助成状況を、各市町村独自の支援状況とあわせてお伺いする。

答弁
「体外受精」や「顕微授精」を行う特定不妊治療の助成件数は年々増加しており、平成27年度の助成件数は1,052件、前年度比112件増、11.9%増となっている。
このうち約6割が県外医療機関を受診している。
県内で特定不妊治療を行っている2カ所の医療機関のうち、「岩手医科大学附属病院」では、今年度新たに、生殖医療専門医の認定を受けた医師が着任したことにより、生殖医療の機能強化が図られ、治療件数の増加や、人材育成の推進が期待されるところである。
特定不妊治療については、長期の受診が必要な方もおり、仕事と治療の両立に関する社会的理解や、早期に治療を開始することが有効であることなどの普及啓発が必要だと考えている。
このため県においては、岩手医科大学に不妊専門相談センターを委託設置して、不妊相談等を実施しているほか、県政番組などの広報媒体を活用し、特定不妊治療費助成の制度改正の周知や不妊の原因などに関する正しい知識の普及啓発を行っているところであり、引き続き専門医等で構成されている「不妊治療協議会」の意見等も踏まえながら、不妊に悩む方々への支援を行っていく。
また、男性不妊治療への助成については、昨年度国の取り組みに先駆け、本県独自に創設した男性不妊治療費助成も含め、平成27年度は9件、平成28年度は、10月末現在で3件の実績となっている。
なお、市町村独自の支援については、県の助成に一定額を上乗せするなど、31市町村で実施しているところである。

⑤ 不妊に至る現状の認識と課題について
この雑誌に、達増知事の大学の後輩でもある三重県知事の対談が掲載されている。
不妊治療の助成とは、不妊治療の高度な助成を求めているのではなく、なぜ不妊に至っているかという現状も意識していただきたいということである。
ここで三重県知事は、小、中、高校、成人と、段階を分けて男女ともにライフプラン教育も始めているとお話しされている。
切れ目のない支援をと言っているのは、切れ目があるからこそこのような支援をしなければならないという国の認識だと私は思っている。
今までの質問を通じて、なぜ不妊に至っているかの現状と課題について、これまでの医師確保も含めて改めて知事の御所見を伺いたい。

答弁
学校を卒業し、就職あるいは家庭での生活、様々なライフステージに応じて、ともすれば切れ目のようなものが出てくる。
そこを切れ目のないように、体と、そして人生、命に関する必要な知識をしっかり理解した上で、主体的な選択を女性、そして男性もできるようになっていくことが大事なのだと思う。
岩手県としても、そういう情報を得て、主体的な判断、自由な判断、選択ができる機会をつくっていかなければと思うし、特にニーズのあるところに対してはしっかり手当てをしていきたいと思っている。

2. 防災、減災対策としての森林整備について

災害に強い森林や山の管理について、これまでの委員会等でも山津波を防ぐには、土砂災害防止や洪水緩和等の機能を有する森林、山の管理、治山事業や地すべり防止事業などが重要であることを訴え続けてきた。
県の山地災害防止機能の確保が必要な区域数は、県全体で3、865区域あるとのこと。
それらの整備状況を含め、森林、山の管理等の事業について、今後の防災、減災対策の中で適切に位置づけて取り組んでいくべきと考えるが、県の認識をお伺いする。

答弁
森林は、土砂流出の防止や水源の涵養などの多面的な機能を有し、これらの機能が十分に発揮されることが重要であることから、これまでも防災、減災対策としての森林整備に取り組んできた。
本県で、山地災害防止機能の確保が必要な区域数は、3、865区域である。
このうち平成27年度までに2、089区域で整備を進めており、その着手率は約54%となっている。
度重なる大雨災害などに見舞われる中、森林の整備と保全の重要性が一層高まっており、今後とも、森林所有者や林業関係者と一体となって災害に強い森林づくりを進めるとともに、治山事業や地すべり防止事業を計画的に推進するなど、山地災害防止機能の確保、強化に取り組んでいく。

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