議会質疑・答弁
Parliament
- 令和元年
- 9月定例会「総括質疑」
- 6月定例会「一般質問」
令和元年9月定例会
【総括質疑】
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1. 安心して子どもを生み育てられる環境について
(1)周産期医療体制の充実について
- ア ドクターヘリによる新生児搬送について
- イ 新生児蘇生法及び母体救命研修について
- ウ 人材育成・確保の取り組みについて
- エ 医師等の負担軽減の取り組みについて
- (2)産婦健診と産後ケアの取り組みについて
- (3)キャリア教育とライフプランニング支援について
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2.医療的ケア児等への支援について
- (1)保育所および小中学校への看護師配置について
- (2)今後の取り組みについて
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3. 防災減災対策について
- (1)ハザードマップの取り組み状況(市民への啓発)
- (2)ハザードエリアとまちづくりについて
- (3)大規模な太陽光発電施設整備について
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4. 農林水産業の振興について
- (1)スマート農業の推進について
- (2)農業女性の子育て支援の取り組みについて
- (3)いわての森林づくり県民税について
- (4)馬事文化振興について
1.安心して子どもを生み育てられる環境について
(1)周産期医療体制の充実について
高齢出産、低出生体重児の割合増加に伴い、ハイリスク妊娠、出産に対する医療や高度な新生児医療の需要が一層高まる中、県ではこれまで、県内4つの周産期医療圏を設定し、分娩リスクに応じた医療提供体制の確保を図ってきている。しかし、岩手県内の分娩取扱い医療機関は、平成22年度の40施設から現在は27施設にまで減少。分娩取扱い病院のある市町村は、33市町村中11市町のみ。そのうち10施設は盛岡市にあり、産科医小児科医の不足や地域偏在が存在しているのが現状である。
先日は、岩手県中部で産科医療の中核を担っている北上市の県立中部病院への、東北大学病院からの産婦人科医師の派遣が減らされることになるという事に対し、岩手医大から医師を派遣いただくよう、県がいち早く対応されたことは敬意を表する。しかし、花巻市では来年3月に診療を取りやめる病院もあるとも聞き、以前県内の周産期医療を取り巻く環境は大変厳しい状況には変わりない。
2018年度事業は、周産期医療体制の充実のための新たな事業が複数盛り込まれた。
ア、ドクターヘリによる新生児搬送について
岩手県では、年間約30名程度の新生児が総合周産期母子医療センターに救急搬送されている。2018年度に、総合周産期母子医療センターのスタッフ増員による救急搬送コーディネート体制が整備され、また、ドクターヘリに新生児搬送に必要な保育器や人工呼吸器当の医療機器が整備され、新生児ヘリコプター搬送体制が整備された。岩手医大が矢巾町に移転開院した後の運用開始ということで、その間の搬送はまだないと聞いている。それを支えるスタッフの体制、研修状況は十分であるか。
救命救急士等を対象とした新生児蘇生法及び母体救命研修を行っているが、誰がどの程度それぞれの研修を受講したのか、その人数は十分との認識かと併せて伺う。
答弁
ドクターヘリによる新生児搬送についてでありますが、県として、緊急対応を要する新生児等のドクターヘリによる搬送体制の確保に向け、岩手医科大学に対して専用保育器、人工呼吸器等の医療機器の整備に必要な支援を行ったところであり、現在岩手医科大学において運航体制の構築が進められ、今後、運用が開始されるところ。
新生児搬送に当たっては、救急医療担当のフライトドクター、フライトナースによる通常のドクターヘリの搬送体制に加え、小児科医師1名が搭乗することとなるが、小児科医師のスタッフは計4名が予定されているところ。
現在、岩手医科大学において必要な安全教育など、運用開始に向けた準備が進められているところであるが、今後、小児科医師や消防機関等が実際の器材を用い、様々なパターンのシミュレーションの下に訓練を行い、問題点に対する対策の検討などが重ねられるものと伺っており、これらを経て、安全な運航体制の確保が図られるものと考えている。
イ、新生児蘇生法及び母体救命研修について
救急救命士等を対象とした新生児蘇生法及び母体救命研修を行っているが、誰がどの程度それぞれの研修を受講したのか、その人数は十分との認識かと併せて伺う。
答弁
新生児蘇生法及び母体救命研修についてでありますが、新生児の緊急の救命処置に要する高度な専門技術等の習得を目的とする「新生児蘇生法研修」については、平成30年度の受講実績について申し上げると、210人が受講し、その内訳は、医師28人、助産師60人、看護師84人、救急救命士38人となっている。
母体救急に要する専門的技術等の習得を目的とする「母体救命研修」については、同じく平成30年度について、主に病院内での妊産婦救急蘇生等の高度な専門技術の習得を目的とする研修におきましては、19人が受講し、その内訳は、医師3人、助産師15人、救急救命士1人となっている。
緊急対応を要する妊産婦に対する処置技術等の習得を目的とする研修につきましては、18人が受講し、その内訳は、医師3人、助産師14人、看護師1人となっている。
これまでの受講者数は、「新生児蘇生法研修」につきましては延べ857人、「母体救命研修」については延べ141人に上っているところであり、新生児及び妊産婦の救急医療を支える人材は相当程度養成されてきたものと認識しておりますが、ハイリスク妊産婦の増加等に適切に対応していくためには、日進月歩の状況にございます救命救急の専門技術の進歩に応じた人材育成を図る必要があり、これらの研修を継続し、更なる受講者の拡大を図っていく。
ウ、人材育成・確保の取り組みについて
産科等を専攻する奨学金養成医師へは特例措置が設けられたが、その状況はどうか。平成27年度開始のシニアドクター制度は、これまで採用数20名に対し退職者数7名。いずれ退職してしまうシニアドクターだけでなく、現役医師の招へいに力を入れるべきではないか。
他県では、医学部進学者が公立高校よりも私立高校からが多い実態から、医師を目指す学生と学校を支援するため、医学部に進学した学生を輩出した私立高校への補助に取り組むところもある。
同じく平成27年度導入のママドクター制度で確保できたのは、これまで磐井病院の産婦人科の女性医師1名のみと聞いている。特にも、小児科、産婦人科共に女性医師の割合が増加していることから、育児や家庭との両立支援となる具体的なものを県独自で作るべきと思うが県の考えを伺う。
答弁
人材育成・確保の取組についてでありますが、産科等を専攻した奨学金養成医師の状況については、平成28年度に県が養成医師の配置を開始して以降、この4年間に養成した132名中、産科が5名、小児科が7名となっており、そのうち、平成30年度の特例措置の運用開始後の1年間で、産科・小児科それぞれ2名が、当該診療科を選択しており、増加の兆しがみられるところ。
なお、本県出身の自治医科大学卒業医師についても、毎年度3名程度養成されており、今年度新たに配置となった1名が小児科を選択したところ。即戦力医師の招聘については、平成18年9月に医師招聘の専担組織を設置して以降、これまでに延べ157名の医師を招聘しており、そのうち、産科医が5名、小児科医が19名となっている。
産科医、小児科医をはじめとした医師の確保については、全国的にも厳しい状況にあることから、本年度、医師支援推進室の体制を強化し、本年10月1日現在で昨年度の同時期より9名多い13名の医師を招聘し、そのうち、小児科医が3名となっている。
女性医師への支援については、県において、夜勤時のベビーシッターの派遣や育児休業後の復職研修などを実施しているほか、県立病院においても、現場の意見を聞きながら、院内保育所による24時間保育の導入や育児短時間勤務制度の拡充などに取り組んでおり、今後さらに、ニーズが高い病児保育の実施について検討を進めることとしている。
女性医師については、医師としてのキャリア形成の時期と、出産・育児の時期が重なることも多いことから、個々の状況に応じた両立支援が重要と考えており、県としては、県内外の効果的な取組を収集し、広く波及させていくことにより、女性医師が働きやすい職場環境づくりに取り組み、産科等の医師の確保・定着につなげていく。
エ、医師等の負担軽減の取り組みについて
周産期医療情報ネットワーク「いーはとーぶ」は平成29年度には県内すべての市町村が参画し、医療機関との情報連携体制が強化されたが、医師負担軽減にどの程度貢献しているのか伺う。
また、平成30年度包括外部監査の結果報告書では、課題も指摘された。システムが稼働して9年が経過するが、医療情報の共有により速やかな支援につながったケースがあり効果的な運用がなされている一方で、活用があまり進んでいない医療機関もあるという。このシステムの利用状況や機能の更新等について、今後の取り組み方針も併せて伺う。
答弁
周産期医療情報ネットワーク「いーはとーぶ」につきましては、平成21年度に、母体の緊急搬送・患者紹介の円滑化や、産後の育児支援等を目的に整備したものであるが、ハイリスク妊産婦等の受入れ先医療機関において、健診データや病歴などを瞬時に参照することが可能になることで、リスクレベルに応じた必要な医療の提供までの時間短縮につながるなど、医師の負担軽減にも寄与しているものと認識しているところです。
システムの利用状況については、これまでに、延べ67,122人の妊産婦の情報が登録されているが、全市町村の参加を得ていることから、母子健康手帳交付者に対する登録者の割合は県全体で95%を超えているところです。また、利用の主な内容は、母体搬送に関する情報が2,801件、市町村や医療機関との間で妊婦情報を共有した件数が4,420件などとなっております。
このシステムにより、ハイリスク妊産婦等に対する迅速な医療提供が可能となるとともに、市町村との情報共有による産後うつ等に対する適切な保健指導にもつながる面でも極めて重要なシステムと認識しています。
したがって、機能の更新等については、利用上の問題点を検証しながら、逐次、システムの改良を行っているところであるが、さらに、市町村や医療機関が有する他の医療情報システムとの連携や各種統計機能の改良等について、システム開発業者や市町村、医療機関の関係者も交えながら具体的な検討を行っているところであり、今後、市町村や医療機関のニーズを踏まえたシステム構築を図ってまいります。
(2)産婦健診と産後ケアの取り組みについて
県の積極的な取り組みにより、県内各地で産後ケアを実施する市町村が増え、奥州市では水沢病院へ委託することで県内初の宿泊型も始まるなど、17市町に広がったことに対し敬意を表する。
しかし、いまだ事業を実施している自治体は限られ、事業の内容にはばらつきがあり質の向上が課題であると感じており、また、利用にあたっての負担額にも差が生じており、利用にためらう産婦も少なくなく、地域間格差が生じ、十分な支援につながっていないのも現状である。
県では、子どもの定期予防接種体制を見直し、広域予防接種パスポートの仕組みを創っていただき、私も委員会で取り上げさせて頂いたので大変感謝しているが、産後ケアについてもぜひ同様の仕組み創りを検討して頂きたい。例えば、花巻市出身で久慈市民の産後のお母さんが花巻市へ里帰り出産をしている際、花巻市での産後ケアを受ける際、花巻市民への補助が利用できないのが現状。知事は、これまでの一般質問の質疑で、「県は広域的な調整役である」とご答弁されている。子の予防接種において里帰り出産のお母さんに対応しているように、産後ケアについても、地域間格差を少しでもなくすため、居住または里帰りの際の隣接する市町村において広域的な利用が可能となるようにするなど、ぜひ検討していただきたいが如何か。
また、市町村では、生後28日以内に「新生児訪問」と生後4か月を迎えるまで「こんにちは赤ちゃん訪問」も実施されることとなっているが、それらと産後ケア事業の取り組みの状況を県は把握すべきであると考える。
さらに、産後うつの予防や新生児への虐待予防等を図るため、産後2週間、産後1カ月など出産後まもない時期の産婦健康検査があるが、県内で公費助成する市町村は、22市町村になっている。
2018年度時点では富山県が、今年度は静岡県の全市町村で助成をしている。また、三重県では、産婦健診を統一した制度として、産婦さんがどの地域で受診をしても同様のサービスを受けることができるよう「産婦健康診査事業実施マニュアル」が作成されている。本県においても、産後の女性への支援が、地域間格差の生じないよう、また、あらゆる方法で産後うつ予防と児童虐待防止につながる取り組みと連携を強化していただきたいが、先の私の提言に対する所管も含め、今後の取り組みについて伺う。
答弁
産婦健診と産後ケアの取組についてでありますが、新生児訪問事業及び乳児家庭全戸訪問事業は、現在、県内全ての市町村において実施されているところでありますが、産後ケア事業や産婦健康診査事業については、委員御指摘のとおり、全ての市町村における実施には至っておらず、その取組は市町村によって違いがみられるところであります。
県では、こうした母子保健施策が、広く妊産婦等と接触する機会として、効果的に実施されることが、悩みを抱える妊産婦等を早期に把握し、産後うつと児童虐待の発生予防や早期発見等につながると考えておりまして、中でも、心身の不調または育児不安等を抱える産婦に対して実施する産後ケア事業は、その効果が高く、産婦健康診査事業の実施にもつながることから、「いわて県民計画(2019(にせんじゅうきゅう)~2028(にせんにじゅうはち))」において、全ての市町村における事業の実施を目標に掲げ、取り組んでいるところであります。
市町村が産後ケア事業を実施するに当たっては、対応スキルを習得した専門人材の確保に課題があると認識しておりまして、県としては、支援を担う潜在助産師の掘り起こしや、研修会による母子保健指導者等の資質向上などにより、市町村の事業導入を支援します。
また、委員御提言の広域的な連携については、産後ケア事業の実施市町村が半数にとどまっている状況を踏まえ、まずは全県にその取組を広げることが必要と考えていますが、今後、広域的な連携のあり方について市町村と意見交換を行ってまいります。
(3)キャリア教育とライフプランニング支援について
出生数は減っているものの、2500g未満の低出生体重児の割合が増加していることに加え、高齢出産などハイリスク妊産婦の増加している。母児共に元気な出産を迎えるための準備は、妊娠してから急にできるものではない。安産には妊娠前からの体づくりと心づくりが大切。
2013年の若者の意識に関する調査では、男女とも年齢が高くなるほど妊娠する確率が下がるなどについて、「よく知らない」または「知らない」と答えた人は、高校生に当たる15歳から19歳までにおいて、44%もいるという結果が出ており、特に妊娠と年齢の関係についてよく知らない人が多いことがわかった。
文科省では、学校教育段階におけるキャリア教育の推進については、若者が自らの進路を選択する際に就職のみならず結婚、出産、育児等のライフイベントを踏まえた生活の在り方も視野に入れて,総合的に考えることができるようにすることが重要だとしている。そのため、高校生が生涯を通して、主体的に生涯の生活を設計したり、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現したりすることができるよう教材も作成している。
過去の予算特別委員会においても、キャリア教育とライフプランニング支援について取り上げたが、その後どのように進んでいるのか、課題の認識についても伺う。
答弁
教育委員会では、全ての高等学校においてキャリア教育に関する計画を作成し、生徒に身につけさせたい資質・能力を明確にしながら、生徒の実情に応じた取組を進めています。
また、本年5月には、私が盛岡工業高等学校に出向き、「岩手で働き、暮らす」ことを選択してもらえるよう、生徒の保護者に直接説明するなど、教育委員会と知事部局が連携した取組も進めているところです。
ライフプランニングについては、家庭科及び保健体育の教科において、結婚・妊娠・出産・子育てなどのライフイベントを踏まえた人生の見通しについて、補助教材も活用しながら、全ての生徒が学習し、主体的に人生を設計できるライフデザイン能力の育成に努めているところであります。
一方、今般の学習指導要領改訂に伴い、令和4年度から実施される高等学校家庭科では、「生涯における生活設計」の内容の充実が図られたところであり、教員の指導力向上が一層求められていると認識しております。
このため、昨年度から、家庭科教員に授業の工夫や、消費者教育の指導方法等の研修を実施するとともに、教科以外においても、社会人講師による講演会を開催するなど、引き続き、その内容の充実を図りながら、キャリア教育とライフプランニング支援の推進に努めていくこととしております。
2.医療的ケア児等への支援について
県は、10月2日、日常生活を送るために医療行為が必要な「医療的ケア児」に関する初の実態調査結果を公表。重度の肢体不自由と知的障害が重複する重症心身障害児(重心児)かつ医療的ケアが必要な児は129人、医療的ケアのみ必要な児は66人だった。
アンケートから、家族の通院時の介護や時間的制約に負担感が大きいこと、一時的な受け入れニーズの対応が不十分であることが示された。
また、10月12日には、病気や障がいのある子ども達を支援する「いわてチルドレンズヘルスケア連絡会議」が設立された。この連絡会議の委員にもなられた方等と懇談を何度もさせて頂いているが、子どもが障がいを持って生まれたり、NICUに長期入院せざるを得ない状況になると、子ども中心の生活になり、産後の母に対する支援は殆ど受けられる状況になく、また、兄妹がいる場合障がいの有無によって窓口も変わるので負担はさらに大きく、情報提供すら乏しいという。
新生児医療の発達で、救われる命、また医療的ケアを必要する子どもが増えている一方で、ライフステージに応じてその後の成長を支える切れ目のない取り組みは遅れている
(1)保育所および小中学校への看護師配置について
医療的ケア児等が、適切な医療を受けながら、保育および学校生活等が送れるよう、平成30年度は、既存の「岩手県重症心身障がい児・者支援推進会議」に、保健、保育、教育などの関係者を加えて連携体制を強化されたことに対し、評価する。
その後の関係機関の連携強化によって30年度は、具体的にどのような成果があったのか。課題と合わせて伺う。
答弁
医療的ケア児への支援についてでありますが、昨年度、県においては、今委員からご紹介もあったが、「岩手県重症心身障がい児・者及び医療的ケア児・者支援推進会議」を設置し、医療や福祉、教育分野の関係者により、今後の施策の方向性や実態把握の手法等について議論を行ったところである。
この会議での議論を踏まえて実施した実態調査では、在宅の医療的ケア児等153人中、6割を超える101人が保育所や小中学校等に通っていることが明らかになり、医療・福祉と教育の両分野におけるサービスの連続性を確保するための関係機関の連絡調整を一層進める必要があるというように現在認識している。
県では、これまで、地域における医療・福祉、教育等が連携する協議の場の設置を、市町村に対し促してきたところであり、現在、31市町村において単独又は圏域で設置されている。
この協議の場においては、情報の共有はもとより、今般の調査もあって、医療的ケア児等の具体的なケース検討に取り組む地域も出てきており、このような動きを加速するため、全ての市町村でこの協議の場が設置されるよう取り組んでいきたいと考えている。
併せて、児童生徒が適切な医療的ケアを受けられる環境の構築には、学校現場等で医療的ケアを担う人材の配置が求められることから、その人材を養成するため、看護師や相談支援専門員等を対象とした研修に引き続き取り組んでいく。
※再質問
今年の4月に、滝沢第二小学校で、滝沢市で初めて医療的ケア児を受け入れるということで、5年生の受入れにつながったが、県として会議を設置したことによって、こういう事例が市町村に出てきているのか、それを確認したいと思う。
※答弁
県が設置した支援推進会議が、直接に滝沢第二小学校への看護師配置につながったかどうかについては、なかなか評価は難しいところである。
県教育委員会としては、各市町村教育委員会に対し、国の「切れ目ない支援体制整備充実事業」の活用について促しており、そのことを含めて、滝沢市教育委員会で御対応になったのか、現時点では確認できないが、いずれ滝沢市教育委員会において国庫補助事業の活用による看護師配置に取り組むこととなったもの。
3.防災減災対策について
土砂災害、水害、地震災害等の自然災害が毎年のように発生し、貴重な生命や財産が失われている。さらに、気候変動による大雨の頻度増加・台風の大型化等に伴う災害の頻発・激甚化も懸念されている。ハード対策のみでは限界があり、被害の軽減のためにはソフト対策を含めた自助・共助・公助のバランスが取れた総合的な防災対策の推進が重要である。
(1)ハザードマップの取り組み状況(市民への啓発)
洪水の危険度を住民に伝えるハザードマップについて、国は市町村に作製・公表を義務付けている。
台風19号による豪雨被害を受けた複数の地域で、自治体の作ったハザードマップはほぼ正確に浸水の範囲を予測していた。行政がもっとマップへの理解を広めていれば、助かった命があったかもしれない。「想定外」ではなく、「想定」を生かして命を守り、町を守る対策が問われている。
各市町村のハザードマップの作製状況はどうなっているか。住民への周知の取り組みは十分かどうか。県の認識を伺う。
答弁
ハザードマップの状況ですけれども、今年9月末現在では、県内28の市町村が洪水ハザードマップを作製し、全世帯に配布を行っておりますほか、ホームページへの掲載や、広報誌の活用、地域説明会、出前講座など、それぞれの市町村において工夫しながら住民への周知に取り組んでいるところでございます。
内閣府の資料によりますと、平成30年7月の西日本豪雨で被害の大きかった倉敷市真備町で被災された方々などのハザードマップの認知というものについての調査がありまして、存在を知っている人の割合は、75パーセントでありましたけれども、内容を理解していたという割合は、24パーセントであったという資料があります。こうしたことを勘案いたしますと、本県におきましても、ハザードマップが実際の避難行動に結びついていくためには、さらなる住民への周知が重要ではないかというふうに考えております。
県では、国、県、市町村等で構成いたします大規模氾濫減災協議会、これはですね、県内に3協議会、それぞれの水域ごとに3つあるわけでございますけれども、そういった場を通じまして、効果的な市町村の取組事例等の共有を図るなど、市町村による住民へのハザードマップの周知がより一層図られますよう、支援して参ります。
(2)ハザードエリアとまちづくりについて
土砂災害や浸水の危険がある「ハザードエリア」については、まちづくりとの関係で課題があるように感じる。コンパクトシティの取り組みのために、県内の2市では立地適正化計画を作成公表済みで、7市町村で作成に向けて取り組みを実施中とのこと。
商業施設や住宅を集約する「コンパクトシティ」の計画には、居住を誘導する区域に災害リスクのあるエリアが含んでいる場合もあるのではないだろうか。
ある専門家は、浸水想定地域からインフラ施設や居住を移転させる誘導策の検討も中長期的な課題だとし、短期的には、どう命を守るのか、具体的な避難方法などを住民に理解してもらう必要があると話している。
県は、ハザードマップとまちづくり(都市計画)について、どのような認識であるのか。
また、ハード整備による対策の限界がある中、どのようにインフラを強化するのか。気候変動を踏まえた対策への転換をどのように図っていくのか。
答弁
従来、都市計画法に基づく都市計画区域は、それぞれの街の歴史的経緯とか機能の集積の状況等によりまして、その都市計画区域の中に、洪水や土砂災害などの危険性を含む場合もあります。
こうした災害リスクに対しては、都市計画法のみでの対応は難しく、河川改修や土砂災害対策など他の法律や制度によって、住民の生命や財産を守る取組をこれまで行ってきました。
国では、近年の激甚化する自然災害を踏まえ、都市計画法の適正な運用を促す指針の中に、平成26年度に「土砂災害特別警戒区域など特に危険性が高いエリアを、原則として居住を誘導すべき区域に含めるべきではない」と、初めてその方針を出したという状況でございます。
また、同時に、都市再生特別措置法を改正し、委員からお話がありました立地適正化計画制度というものを創設しました。これは、市町村が都市計画区域内に医療や福祉、商業など、都市機能を誘導するエリアと居住を誘導するエリアとの2つを設定し、住宅を安全なエリアに誘導できるようにする、そのような制度であります。
そして、今年の7月、国の社会資本整備審議会の「都市計画基本問題小委員会」では、この居住誘導区域からハザードエリアを除外するような方策を進めるべきである、そのような提言をまとめたということで、国の方の動きもいろいろあるところでありまして、今後、国において具体化に向けた検討が進められると聞いております。
委員からお話がありました、県内では、この立地適正化計画を花巻市と北上市が公表しております。それから、7市町村において作成に取り組まれておりますが、県としては国の動向を注視しながら、市町村に対しては適切に技術的助言を行っていきつつ、居住における安全性について、都市計画のアプローチを進めていきたいと思っています。
(3)大規模な太陽光発電施設整備について
太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの普及は、地球温暖化対策にも資する上、エネルギー自給率の向上の面からも重要である。
一方、大規模な森林伐採を行って太陽光発電施設が整備される事案もあり、土砂災害などの自然災害発生による市民生活への影響や、動植物の生態系への影響、また景観への影響等が懸念されている。
10月16日の新聞報道によると、奥州市の胆沢川沿いの河川区域へのメガソーラー建設について、県では、工作物設置について許可したとの事でした。
同地域においては、今回の台風第19号で被害はなかったとの事でしたが、想定外の災害が発生した場合を想定しますと、住民の方々の不安は完全に払しょくされたものではないものと思われます。
また、盛岡市玉山地区や遠野市でもメガソーラー建設を巡り住民からの不安の声や厳しい声が上がっている。
現在、メガソーラーなどの太陽光発電設備の設置を規制する法体系が整備されておりませんが、地域住民の人命や安全性の確保を行うため、森林法の規制に関する要件の厳格化と強制力の強化、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域における規制の強化、地域住民への事前説明の義務付けや地元自治体の意見を反映させるなどの仕組みづくりが必要だと考えるが、県としての考え方についてお示し願います。
答弁
森林法の規制強化についてでありますが、森林法では、知事は、開発行為が「災害の防止」、「水害の防止」、「水の確保」、「環境の保全」の4つの基準に適合すると認めるときは、これを許可しなければならないとされている。
したがって、地域住民への事前説明を義務付けすることは、現行制度においては難しいものの、県としては地元住民との合意の下で開発行為が行われることが適当と考えられる。
このため、法的な裏付けはないものの、申請に先立つ事前相談の際に、開発行為者に対し、地域住民との合意形成を図るよう、求めてきたところであり、今後とも、同様に求めていく考え。
また、森林法の規定では、地元市町村長から意見を聴かなければならないとされており、当該市町村長から意見が出された場合には、意見に沿って対応するよう、許可の条件に附している。
なお、許可要件の厳格化や強制力の強化については、現在、国では、「太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会」を設置し検討を開始したと聞いており、県としても、その動向を注視して対応していきたい。
4.農林水産業の振興について
(1)スマート農業の推進について
県では、平成29年度にスマート農業推進研究会を設置し、農業者、行政、研究者及び関係機関が連携、ニーズ別に活動できるよう8つの分科会が設置され、スマート農業技術の普及やPR活動、研究開発などに取り組んでいる。
県で開催しているスマート農業祭への参加者数も年々増加し、スマート農業に対する関心は高まりつつあり、また、岩手県農業研究センターでは様々な研究がなされるなどしているが、実際の農業者や生産現場への普及はどの程度進んでいるのか。また、生産性向上や収益アップにつながった実績はどの程度あるのか。
スマート農業は、これまで経験した人は少なく、例えばメーカーは運転等について教えてくれても、圃場によっての使用方法等まできめ細やかには教えることは難しいのではないでしょうか。また、若手生産者からは、スマート農業機械の導入に関心はあるが、導入コストで躊躇してしまうという声も聞いている。
平成29年度開始のいわてスマート農業推進事業は今年度でいったん終了となるが、3か年の課題も踏まえ、若手担い手等のスマート農業への取り組みを支援する方策について伺う。
答弁
スマート農業の推進についてでありますが、スマート農業は、平成29年度から取組をスタートし、着実にその拡大を図ってきている。
この結果、生産現場への導入状況は、ドローンを例にとると、水稲などへの農薬散布面積は、平成29年度の75ヘクタールから、平成30年度は842ヘクタールへと急速に拡大している。
また、施設野菜の生産量を飛躍的に高める高度環境制御技術については、初めて導入された平成29年度以降、急速に進み、現在12経営体まで拡大しており、トマトを例にとると、県央の経営体では、県平均の10アールあたり7トンに対し、約40トンを達成するなど、目覚ましい成果を挙げており、多くの生産者から高い関心が寄せられている。
県では、こうした動きを更に加速するため、農業者の高度で多様なニーズに対応できる農業普及員の育成を図るとともに、農業大学校にスマート農業機械・設備を整備し、農業者を対象とした技術習得に向けた研修会を開催している。
今後とも、幅広い関係者の皆様と緊密に連携しながら、担い手のスマート農業に関する知識・技術の習得支援や、実際の生産現場への普及に積極的に取り組んでいく。
(2)農業女性の子育て支援の取り組みについて
今年3月、農山漁村男女共同参画推進協議会が主催する農山漁村女性活躍表彰で一関市の「かさい農産」さんが最優秀の農林水産大臣賞を受賞された。子育て世代を中心に女性の積極的な雇用と子育てや介護の両立環境整備の取り組みが高く評価された。複数の人がこなせる状況をつくることで、急な欠員にも対応できるように柔軟な人員配置をしているのが特長。
日本農業の多くは、家族経営によって支えられている。農業就労者の六割をしめる女性は、農業生産の重要な担い手となっている。また、病気や出産のときに安心して休むことができる制度的保障や、援助制度も確立していない。農林水産省の「農村における男女共同参画意向調査」では、4人に1人が「家族経営なので、出産直前・出産後も農作業をせざるを得ない」という実情にもおかれている。
また、農家の女性が子どもを保育所へ預けようとする際、ハウスなど天候に左右されずに営農できるにも関わらず、農家は天候によって休みが不規則で家が職場だと判断されがちであったり、同居する祖母などが無職だと子を見てもらえる人がいると捉えられるが毎日稼業の農業を手伝っているため殆ど見てもらえないのに、入所点数が低い場合が多い。さらには、子育て家庭をサポートするファミリーサポート制度は、農村部だとサポーター登録者が手薄なため実質利用できないことが多いのが現状。
6月定例会の一般質問では、多様な人材の確保として、短時間でも働きたい子育て女性と繁忙期の農業をつなぐ仕組みを提言したが、例えば、酪農農家には「酪農ヘルパー制度」があるように「子育て応援農業ヘルパー」のような制度を構築してはどうかと思うが、県の考えを伺う。
県では、幸せ創る農林漁業者育成事業など、農林水産分野における女性の活躍支援を積極的に行っているが、農林水産分野における子育て支援についての県の認識とこれまでの取り組み状況について伺う。
答弁
農業女性の子育て支援の取組についてでありますが、女性の皆さんが農業経営に重要な役割を果たしていることはその通りで、かさい農産が受賞したという雇用での取組は非常に高く評価できる。
一方、家族経営が中心となる農業経営に携わる女性においては、子育て環境あるいはこれを支える労働力確保を充実させていかなければならないというのは、そのとおりの認識である。
委員ご提案の「子育て応援農業ヘルパー」は、農業分野において、子育てをお母さんがやっている間に農作業ヘルパーをするという仕組みであり、一つの有効な案と考えているが、酪農の場合と異なり、個々の農家によって農作業の内容が非常にバラエティに富んでいることから、対応できる人材の確保ができるかといった安定的な運用に課題があると受け止めている。いずれにしても、農業における労働力の確保は大事であり、子育てを支援するという面からも、今後とも力を入れていきたい。特に、JAグループが本年度から県と連携して、家族経営を対象に、農作業アルバイトの募集やマッチング、障がい者の就労支援といったことと結びつけていくという取組を進めており、委員のご提案も参考にしながら、農業労働力の問題、農家の皆さんの子育ての問題に積極的に取り組んでいく。
(3)いわての森林づくり県民税について
県では、平成18年度に『いわての森林づくり県民税』に導入し、森林を良好な状態で次の世代に引き継いでいくため、森林環境の保全のための施策を実施しています。
まず、いわての森林づくり基金の平成30年度末の現在高、令和元年度の取崩予定額、平成31年度末の現在高をお示し願います。
いわての森林づくり基金を活用する対象事業は、5年毎に事業期間が延長され、令和2年度は、第3期計画の4年目となっております。私は、今回の選挙公約に「いわての森林づくり県民税を活用した子育て支援」を掲げさせていただきました。「いわての森林づくり基金」は、公益的機能を有する森林環境を維持保全し、良好な状態で次の世代に引継ぐという目的をもっております。知事の所信表明にもありました通り、2022年には48年ぶりに、天皇皇后両陛下をお迎えし、本県において「全国植樹祭」が開催されることとなっており、国民的行事がなされることも契機に、新たな視点を盛り込んで本県の豊かな森林環境を次の世代に引き継いでいきませんか。県立森林公園の施設整備や、市町村が行う新生児への木製品の贈呈など、県民に身近となるような県民税の使途拡大についてこれまでも提言させていただいていますが、是非、次の事業期間における対象事業の見直しにあたっては、子育て支援を盛り込んで欲しいと思いますが如何でしょうか。
答弁
いわての森林づくり基金の平成30年度末現在高は、22億5,365万3千円となっている。また、令和元年度の取崩予定額は、7億8,153万7千円、令和元年度末の基金残高は、21億9,965万3千円と見込んでいるところ。県民税については、現在、事業評価委員会において、令和2年度までの第3期終了後のあり方について検討をいただき、年度末を目途に提言の取りまとめをお願いしているところ。委員会においては、県民懇談会などを通じて、県民の皆様をはじめ、県議会、市町村の御意見などを広くお伺いしながら、委員から御提言いただいた使途の拡大も含め、県民税のあり方について、議論を深めていただきたいと考えている。
(4)馬事文化振興について
チャグチャグ馬コや南部流鏑馬などで使用する農用馬の県内の飼養農家数が減少傾向にある。馬事文化を守るには馬資源の確保が不可欠。県では、2017年度から2か年で馬事文化プロモーション推進事業を実施したが、担い手対策などどのような成果が出たのか。
答弁
馬事文化振興についてでありますが、平成29年度から実施している「馬事文化プロモーション推進事業」におきましては、これまで継続いたしまして、皆さんが馬に触れ合うイベントの実施、専用ホームページによる情報発信などに取り組んで参りました。また、馬に関係する団体や市町村とで構成する馬事文化地域連携連絡協議会を組織いたしまして、馬資源の効率的な利用や担い手の確保のあり方などについて意見交換を進めてきております。
平成29、30年度には馬事文化に関するシンポジウムなども開催し、その意義を普及するということもして参りました。
このような取組によりまして、馬事文化に対する県民の御理解が一定程度進んだと考えておりますし、馬事に関係する関係者のネットワークが構築され、馬資源の広域的な利用調整などに結び付いており、一定の成果があったものと考えております。
今後とも、こうした取組みを継続しながら、本県馬事文化の振興を図り、観光客の増加などさまざまな効果があるように、継続的に取り組んで参ります。
令和元年6月定例会
「一般質問」
【質問項目】
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1. 子供を産み育てやすい環境作りについて
- ① 安心して妊娠出産育児のできる環境について
- ② 母乳育児と仕事の両立支援について
- ③ 医療的ケア児支援のための保育所及び小中学校への看護師配置について
- ④ 保育園周辺の安全対策について
- ⑤ 子どもを産み育てやすい環境作りへの意気込みについて
-
2. 農林業の振興について
- ① 農業労働力の確保について
- ② 「いわての森林づくり県民税」について
-
3. 地場産業の振興と雇用の拡大について
- ① 医療機器関連産業の振興について
- ② 伝統的工芸品産業の振興について
-
4. スポーツを通じた地域振興について
- ① 地域の活力につながるスポーツの推進について
- ② 盛岡南公園野球場(仮称)の整備と周辺地域の振興について
-
5. 岩手県動物愛護センター(仮称)について
- ① 関係者の連携による運営体制について
- ② 岩手県動物愛護推進協議会からの意見について
1.子供を産み育てやすい環境作りについて
① 安心して妊娠出産育児のできる環境について
胸ふさがれるような虐待の事件が後を絶たない。
虐待死の実に65.3%は0歳児。
加害者は実の母親が最多で、さらに辛い事実である。
虐待には、様々な背景があるが、「産後うつ」はその原因の一つと考えられている。
「産後うつ」は、出産後にホルモンのバランスが不安定になることに加えて、24時間休みない育児による睡眠不足や、精神的にも肉体的負担に疲労困憊し、そこに子育ての支援者がいないという事態が重なることで起こると言われている。
産後うつは出産経験者の7人から10人に1人が経験するというもの。
決して、特別な話ではなく他人事でもない。
また、2016年までの2年間で、産後1年までに自殺した妊産婦は全国で少なくとも102人いたと、全国規模の初めての調査結果を厚生労働省が昨年発表した。
妊産婦の死因では、ガンなどを上回り自殺が最も多く「産後うつ」などのメンタルヘルスの悪化で自殺に至るケースも多い状況だ。
これらのことから、児童虐待の発生予防や早期発見、産後うつ予防のためには、特にも妊産婦への早期介入策と支援の強化が重要と私はこれまでも提言している。
日本では、妊娠・出産期と出産後1ヶ月以降で母子支援を主に担う機関が分断されており、行政にとっては、母親学級は、妊婦との接点となる機会だが、おもに初産婦のみの対象となっていて、経産婦との接点にはなっていないのも現状だ。
妊産婦・乳幼児等の状況を継続的・包括的に把握し、妊産婦や保護者の相談に保健師等の専門家が対応し、必要な支援の調整や関係機関と連絡調整するなど、妊産婦や乳幼児等に対して切れ目のない支援を提供できるよう子育て世代包括支援センターの設置が全国で進んでいる。
(1)ハイリスク妊婦等の対応と市町村の取り組みについて
岩手県でも、昨年度までに9市町、今年度から2市町、今年度中に2町が設置検討中とのこと。
子育て世代包括支援センターは国の目指す2020年までの設置が急務ではあるが、各市町村においてセンターが果たすべき役割がしっかり機能することが重要だ。
児童虐待は、主に妊娠期からその傾向が伺われるという調査研究結果もあるが、現状では、周産期以降(産後)に焦点を当てたものが殆どで、妊娠初期からの取り組みは薄いと感じている。
県では、乳幼児健診の未受診者数は把握しているが、妊婦健診の未受診者数について把握されていないとのこと。
虐待因子を抱えている特定妊婦やハイリスク妊婦への継続したアプローチや医療機関との連携等の取り組みはどのような工夫によりに行われているのだろうか。
答弁
県では、妊産婦のケアや乳幼児の健全な成長に資するため、母子保健活動を推進しているが、児童虐待の発生予防と早期発見にも資する重要な取組として、児童虐待防止アクションプランにも位置づけ、その充実に取り組んでいるところである。
そうした中で、医療機関が妊婦健診などにおいて支援が必要と認められるハイリスクの妊婦等を把握した場合、文書や電話連絡による情報提供のほか、岩手県周産期医療情報ネットワークシステム「いーはとーぶ」を通じて、市町村と情報共有を行っている。
連絡を受けた市町村においては、対象となる妊婦が抱える課題に応じて、保健師が医療機関などと連携を図りながらケース検討会議を実施し、家庭訪問などにより継続的な支援を行うとともに、市町村要保護児童対策地域協議会を通じて関係機関との情報共有を図っているところである。
(2)市町村の現状の評価と今後の取組方針について
また、妊娠の届出を受けての母子健康手帳交付時においては、ほぼ全ての妊婦と接点を持つことができる貴重な機会であり、センター設置済みの場合はこの時にセンターの存在周知とともに、その後の妊娠期や出産後も継続して相談しやすい、頼りやすい顔の見える環境や関係づくりが重要と考えるが、子育て世代包括支援センター設置済みの市町村も含め、県は各市町村の現状をどう評価しているのか。
今後の取り組み方針についてもお伺いする。
答弁
現在、11市町で設置されているセンターでは、アンケートや聴き取りなどにより支援が必要な妊婦を把握し、妊娠初期からの妊婦訪問や、医療機関など関係機関との情報共有と連携により、個々の妊婦の心身の状況や家庭環境などに応じた、適切な支援の実施につなげているところである。
妊婦健診の未受診者の把握が難しいなかで、母子健康手帳の発行時から妊婦との関係づくりを行い、妊娠や出産に悩む妊婦等が気軽に相談できる窓口となる、子育て世代包括支援センターの役割は大きいものと認識している。
県としては、「いわて県民計画(2019~2028)」において、子育て世代包括支援センターの設置を促進することとしており、全市町村での設置を目指し、今年度からセンターの活動を後押しする「いわての妊産婦包括支援促進事業」を実施するなど、市町村の取組を促していく考えである。
(3)産前産後サポート、産後ケア事業について
県の積極的な取り組みにより、産前産後サポートは昨年度までに7市町、今年度から5市町で。
産後ケア事業については、昨年度までに9市町、今年度から8市町と、徐々に広がりを見せている事に対し、深く感謝と敬意を表する。
一方で、未だ人材不足等により事業展開できない市町村もある。
茨城県では、「助産師何でも出張相談事業」として、産後の母親のニーズに応じた助産師による訪問事業を茨城県助産師会に委託し行っている。
本県においても、「地域で支える周産期保健医療支援事業」を通じて潜在助産師の掘り起こしなどの人材育成に精力的に取り組んで頂いており、県で育成した助産師を産後ケア事業のない市町村等へ派遣する事業展開をする事はいかがかと考える。
県のご所見と課題に対する今後の取り組みについてお伺いする。
答弁
助産師等の専門職が産後の母子に対して心身のケアや育児のサポートなどを行う産後ケア事業は、産後も安心して子育てができる支援体制の確保につながる重要な取組であり、事業を実施する市町村は徐々に増えてきているところであるが、県としては「いわて県民計画(2019~2028)」において、全ての市町村で実施されることを目指している。
事業の実施に当たっては、妊産婦支援を担う専門的人材の確保が不可欠であることから、県では、「地域で支える周産期保健医療支援事業」を通じて、地域の潜在助産師を掘り起こし、事業に協力いただける助産師のリストアップを行うとともに、産後ケア施設における実地研修等の開催を通じて専門職員の資質向上を図ってきたところである。
また、市町村の要望に応じて、地域の潜在助産師に関する情報の提供を行っているところであり、このような取組を通じて、産後ケア事業の実施や子育て世代包括支援センターの設置に当たり、潜在助産師の活用に至った事例もでてきているところである。
県としては、今後とも市町村との意見交換などを通じて、潜在助産師の活用等の働きかけを行うなど、市町村を支援していくとともに、他県の事例も参考にしながら、産後ケア事業の拡大に向け、より効果的な支援の在り方について検討していく。
(4)多胎児支援のあり方について
今年3月には、泣き止まない生後11か月の次男を床に叩きつけるなどして死なせたというニュースが報じられた。
母親はワンオペで三つ子を育て、犯行時うつ状態にあったという。
一人の赤ちゃんのお世話をするのでさえ精一杯の状況で、それが三つ子育児となるとなおさらだ。
双子や三つ子などのいわゆる多胎児。
30年前に比べて、多胎児の生まれる割合はおよそ1.5倍に増加している。
これは、不妊治療の普及が影響しているとも言われている。
一方で、多胎育児を支える仕組みづくりが進んでいないのが現状だ。
滋賀県大津市では、多胎児のいる家庭に対し、誕生から3歳の前日まで無料で100時間、家事・育児、健診などの外出をサホポートするためのホームヘルパーを派遣している。
佐賀県では、県内子育てタクシーを利用できる利用券(2万円相当)を支給している。
私は、このように多胎児のいる家庭に対し、産後の家事育児支援が本県にも必要と考えるが、各市町村の支援状況もふまえ、県として多胎児支援のあり方についてどう考えているかお伺いする。
答弁
本県の多胎児の出産件数は、平成29年で78件であり、出生数における多胎児の割合で見れば約1.8%となっており、この30年間で約0.5ポイントの増となっている。
県内では、1市において、子育て家庭の負担・不安軽減を目的として実施している産前産後の家事育児支援に関する事業の中で、多胎児のいる家庭について対象年齢を拡大していると聞いている。
また、大津市や佐賀県においては、多胎児のいる家庭の経済的、身体的負担軽減の観点から事業を実施していると聞いているが、一方では、具体的な負担の状況やニーズを精査していく必要があり、多胎児のいる家庭への支援のあり方については、今後、他の自治体の取組等も参考にしながら研究していきたいと考えている。
② 母乳育児と仕事の両立支援について
妊娠出産しても働き続ける女性が増えている。
また、母乳育児をしたいという女性も増えている。
厚生労働省の平成27年度乳幼児栄養調査によれば、妊娠中の93.4%の女性が母乳で子どもを育てたいと答えている。
授乳期の栄養方法は、10 年前に比べ、母乳栄養の割合が増加し、生後1か月では 51.3%、生後3か月では 54.7%。
混合栄養も含めると、母乳を与えている割合は生後1か月で 96.5%、生後3か月で 89.8%。
出産後1年未満の母親の就業状況別に母乳栄養の割合をみると、出産後1年未満に働いていた者は49.3%、育児休暇中の者及び働いていない者は 56.8%。
10 年前に比べ、特に出産後1年未満に働いていた者について、母乳栄養の割合が22.6ポイント増加している。
一方で、母乳育児と仕事の両立に悩む多くの産後女性に接した。
ある女性は、入園可能性の高い4月の入園を選択せざるをえず、子どもが7か月のとき職場復帰したけれど、職場で搾乳をする場所も時間的余裕もなく、復帰後まもなく母乳育児を中止せざるを得なかった。
また、ある女性は育児休業の復帰後、頑張って母乳育児を続けたけれど、搾乳場所がなくトイレで母乳を搾ったという。
さらに、ある女性は、お昼休憩中に昼食は取らず、授乳のため会社と保育園を行き来していたという。
育休を1年以上も取れずに職場復帰せざるを得ず、産後1年未満で職場復帰している女性の多くは、職場と保育所が離れていて直接母乳を与えに行けず、職場で搾乳する時間も場所もなく、不衛生なトイレで搾乳したり、職場復帰にあたって母乳育児を断念しているのが現状だ。
日本では、母乳育児を支える労働環境が改善されることがないまま現在に至っているのではないだろうか。
スイスでは、子どもが1歳になるまで、搾乳および職場内外や自宅・保育所で授乳する権利を認めた法律が導入されている。
フランスでも同様に1日2回の授乳の権利が認められている。
台湾でも、職場に搾乳のための場所と冷蔵庫等必要な物を企業に設置する事が義務付けられているそうだ。
母乳育児だけでなく、ミルク育児であっても、直接授乳させたいという母親の願いにも答えるものだ。
日本にはこのような制度がまだ存在しないが、岩手県独自で母乳育児を支える労働環境を改善するための授乳機会の権利制度を導入し、育児と仕事の両立支援の1つとして、ぜひ検討していただきたいと考えるが、現状認識を含め、知事の所感を伺いたい。
答弁
「いわて県民計画(2019~2028)」においては、安心して子どもを生み育てられる環境をつくるため、妊娠、出産、子育て期にわたる切れ目のない支援体制の構築や子育てにやさしい職場づくりを進めることとしているところであるが、厚生労働省の調査によると、妊娠中の女性の9割以上の方が母乳での育児を希望されているところであり、仕事と子育ての両立を図る上で、職場等における搾乳や授乳のための環境の整備は「重要」と認識している。
県では、仕事と子育ての両立支援などに取り組む企業等の認証を推進しているところであるが、認証を取得した企業においても、搾乳等に係る環境の整備に取り組むことにより認証を取得した事例は無い状況であり、一層の取組の促進が必要と考えている。
このため、まずは、この認証制度において「職場等における搾乳や授乳のための環境の整備」を認証基準として明示することにより、企業等における取組を促すとともに、議員の御提案の趣旨も踏まえ、子育て家庭の母親や企業団体等からの意見もお聞きしながら、取組の促進に向けた支援のあり方について研究していく考えである。
③ 医療的ケア児支援のための保育所および小中学校への看護師配置について
県では、今年度から医療的ケア児等に対する支援が適切に行えるようコーディネーターの養成を開始し、NICU退院後の生活、保健医療福祉、教育等の調整業務を切れ目なく連携支援できる環境整備が今後図られる事、また、「重症心身障がい児・者等の現状及びニーズに関するアンケート調査」結果を現在集計中との事であるが、その結果が今後の県の医療的ケア児への支援に繋がることを切に願う。
日常的に医療的ケアが必要な幼児児童生徒を保育所および公立小中学校で受け入れるための支援体制として看護師の配置がある。
「特別支援学校ではなく、友達や兄弟が通う地域の学校で育てたい」。
両親の希望を叶えるため、全国的に支援体制を整える自治体が増えており、お隣青森県(むつ市)でも進んでいる。
平成30年2月定例会の予算特別委員会において、本県においても看護師配置等家族の負担軽減策を講じて頂きたい旨の質疑において、
『保育所への看護師配置に向けた取り組みについては、国のモデル事業を実施している他県市町村の取り組みなどの情報収集を行いながら、医療的ケア児の受け入れに向けた必要な支援を検討していく。また、小中学校への配置については、国において、看護師の配置や体制整備を進める事業を実施していることから、同事業の導入も含め、市町村教育委員会と連携しながら、医療的ケア児への支援体制の構築に取り組んでいく。』
とのご答弁を知事から頂いたが、これまで具体的にどのような検討がなされ、支援体制の構築に繋がっているのかお伺いする。
答弁
県では、医療的ケア児が保育や教育の現場等において適切な支援を受けられるよう、保育所に向けては市町村を通じ、小中学校等に向けては市町村教育委員会を通じ、国の事業の活用等による看護師の配置を促してきているが、平成30年度の配置は少数に留まっている。
このため、昨年度支援に係る関係者間の連携の強化を図ることを目的として、医療や福祉、教育等の分野の委員で構成する「岩手県重症心身障害児・者及び医療的ケア児・者支援推進会議」を設置し、今後の施策の方向性や実態把握の手法等について議論したところである。
こうした議論を踏まえ、各地域における医療的ケア児の支援体制の整備に向け、今年度新たに、福祉や医療、保育・教育などの関係機関の連携調整を行う人材を養成する「医療的ケア児等コーディネーター研修事業」を始めたところであり、 また、昨年度から今年度にかけて、当事者や関係機関の協力を得て、医療的ケア児の人数や生活状況、介護の負担感、保育所や小中学校などの受入実態、希望するサービス等に関する調査を実施しており、現在その集計・分析を行っているところである。
県としては今後、医療的ケア児等コーディネーターの養成と配置により、地域における連携体制の充実を図るとともに、実態調査の分析結果や支援推進会議での御意見を踏まえながら、具体的な支援方策について検討し、医療的ケア児の支援体制の構築を進めていく考えである。
④ 保育園周辺の安全対策について
通学路等の安全確保対策については、これまでの質疑でも既にあったが、全国で子ども達が犠牲となる交通事故が後を絶たない。
今年5月、滋賀県大津市で保育園の園児が散歩中に巻き込まれる事故が発生した。
これを受け、全国の保育園等では、散歩の時の安全対策を強化するため、コースとルールを見直しているところが多い状況である。
保育園周辺の安全対策について、県警察の認識と今後の取り組み方針についてお伺いする。
答弁
滋賀県で発生したような大変痛ましい交通事故は、本県内でも発生し得るものであり、子どもを交通事故から守る活動を強化する必要があると強く認識している。
これまでも、児童等の安全な通行を確保するため、小学校・保育園等が所在するゾーン30等において、関係機関・団体等と連携した街頭活動、速度取締りなどを推進しているところである。
こうした中、6月18日、関係閣僚会議において「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」が決定され、県警察としても未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路の安全確保について、その緊急点検を含め、関係機関・団体と連携し推進していく。
⑤ 子供を生み育てやすい環境づくりへの意気込みについて
知事は次期知事選への出馬を表明された。
どんな特色を持って、子どもを生み育てやすい岩手県を目指すのか、知事の意気込みを具体的にぜひお聞かせいただきたい。
答弁
いわての子どもの生み育てやすさについては、一般財団法人日本総合研究所の「全47都道府県幸福度ランキング」によると、子育て世代の幸福度ランキングにおいて全国第7位に位置しており、夫の家事・育児貢献度や三世代同居率が全国でも高い水準であるほか、治安の良さや地域のつながりの強さなどから、本県には安心して子どもを生み育てるための好条件があるものと考えている。
一方で、少子化対策・子育て支援は、将来に関する問題であると同時に、今、目の前にある重要な課題であるとの認識のもと、出産や子育てをめぐる現場の声に耳を傾け、個別の県民ニーズに対応し、子育て環境にある県民一人ひとりが、希望を実現できる環境づくりが重要と考える。
このため「いわて県民計画(2019~2028)」において、いわて幸福関連指標として掲げている、東北トップクラスの「合計特殊出生率」や、「待機児童数」ゼロの達成を目指し、更なる結婚・子育てに対する機運の醸成や、妊産婦に対する切れ目のない支援の推進、多様な保育ニーズやひとり親家庭等に対するきめ細かな支援など、安心して子どもを生み育てやすい岩手の実現に全力で取り組んでいきたい。
2.農林業の振興について
① 農業労働力の確保について
日本の農業者は高齢化に伴い、年々大きく減少の一途を辿っている。
2030年には農業就業人口が現在の半数になるとも予測されている。
県では、農業における高齢化、労働力不足が進む中、担い手の一層の規模拡大、省力化や低コスト化を図るための施策として、スマート農業の実現に向けた取り組みや、次世代施設園芸拠点の整備等を推進しており、また、労働力確保のための農福連携にも取り組んでいる。
JA熊本市では、熊本県の支援により、乳幼児期の子育て中の母親を対象にした「コラボワーク」に取り組んでおり、農繁期における労働力確保と就労・子育て支援の拡大につなげている。
この「コラボワーク」は、仕事も子育ても助け合って行っていくワークシェアリングとして三重県で取り組んでいる事例を参考にしており、熊本県でも、労働力確保に向けて悩んでいる農家と子育てをしながら短時間でも働きたい母親たちのニーズが一致し実現に至っているという。
通年雇用が厳しい農家が多い中、特に農繁期におけるこのような取り組みも労働力確保となる1つの取り組みで、また、子育て女性が参画することで農村の活性化にもつながる取り組みであると感じている。
先般、農林水産委員会で盛岡市の「いわて若江農園」を視察した。
現場では、スマート農業が導入され、女性も多く作業していた。
就農人口の維持拡大、スマート農業の導入と同時にあらゆる手段で多様な労働力の確保を進めていくことが重要と考えるが、県の農業労働力確保の取り組みの成果をどう捉えているか。
また、今後の取り組み方針もお伺いする。
答弁
農業従事者のさらなる減少・高齢化が見込まれる中、本県の農業生産を維持・拡大していくためには、農業経営を支える多様な労働力を安定的に確保していくことが重要である。
県ではこれまで、新規就農者の確保に取り組むとともに、就業希望者を対象とした現地見学会や農作業体験、農福連携の取組などを進めてきたところであるが、農繁期である平成30年9月期の農林漁業の有効求人倍率は、2.05倍であり、全職種の1.45倍に比べ0.6ポイント高く、労働力不足の状況が続いている。
このため、本年4月、新たに県、農業団体等をメンバーとする「岩手県農業労働力確保対策推進会議」を設置し、JAが設置する無料職業紹介所の活動への支援や雇用の受け皿となる農業経営体を対象とした労務管理研修会の開催などに取り組んでいる。
また、広域振興局においても、地域の実情を踏まえ、農作業アルバイトの募集やマッチング、障がい者の農業分野への就労支援などの取組を進めている。
県では引き続き、関係団体と連携しながら、農業労働力が安定的に確保できるよう積極的に取り組んでいく。
② 『いわての森林づくり県民税』について
次に、「いわての森林づくり県民税」について伺いたい。
「いわての森林づくり県民税」は、すべての県民が森林から様々な恩恵を受けており、森林は公共的な財産であるという観点に立ち、その受益者である県民全体で負担することにより、多様な公益的機能を有する森林環境を維持保全し、良好な状態で次の世代に引き継ぐという目的のもと、平成18年度に創設され、県ではこの税を財源として、管理が行き届かない公益上重要な森林を整備してきたほか、県内各地において森林環境保全活動を支援してきた。
現在13年目を迎え、2020年度を終期とする第3期の取り組みを推進し、毎年約60万人の県民の皆様から1,000円を、約2万3千の法人から2,000~80,000円の徴収で年間約7.6億円の税収額となっており、いわての森林づくり基金の平成29年度末現在の残額は約18億7千万円となっている。
(1)いわて環境の森整備事業について
県民税を財源として実施される「いわて環境の森整備事業」は、整備を行う計画面積に対して、目標達成率は平成25年度から下降傾向にある。
平成28年度以降も公益上重要で、緊急に整備が必要な森林が約10,000 ヘクタール存在するとして、第3期の取り組みが開始されたが、現在までの達成率とその課題についてどう捉えているのかお伺いする。
答弁
この事業は、公益上重要で緊急に整備が必要な森林を針広混交林へ誘導する強度間伐を実施するものであり、県ではこれまで、関係団体等への働きかけや市町村広報誌等を通じた森林所有者への制度周知を行うなど、施工地の確保に努めてきたところであるが、計画第3期平成28年度から30年度までの直近3年間での確保面積は、4,500ヘクタールの目標に対して、2,241ヘクタールとなっており、この期間の達成率は約5割に止まっている。
その要因は、復興工事に伴う支障木の伐採や近年の国産材の需要拡大に伴う主伐の増加により、森林組合等において間伐を担う作業員を確保することが困難となってきていることに加え、事業対象森林の奥地化等により、施工可能な森林の確保が進まないことと認識している。
こうした課題に対応するため、本年度は施工地確保に向け、新たな林業事業体の掘り起こしや制度周知のためのテレビCMや新聞等による広報活動を強化するほか、奥地での作業を可能とする作業道補修に必要な経費を新たに補助対象としたところであり、引き続き、関係団体等と連携しながら「いわて環境の森整備事業」の着実な推進に取り組んでいく。
(2)いわての森林づくり県民税の方向性について
国の森林環境譲与税の創設や、いわての森林づくり県民税が開始から十数年を経過したことを踏まえ、第3期終了後も県民税を継続する場合、県民の皆さんに県民税の成果をより身近に感じて頂けるよう、また、森林の恩恵を身近に感じて頂けるよう、再造林への支援はもとより、県立森林公園の施設整備やアスレチック施設等への県産材利用、木育の観点から子どもの居場所等の木造・木質化、森林セラピーガイド育成、自然保育活動フィールド等の整備など、使途拡大を検討すべきとこれまで何度も提言させて頂いている。
独自で森林税を導入している都道府県では、使途拡大の動きが出ている。
これまで何度も取り上げているが、県民税事業の今後の方向性について、県としてどうお考えか改めて知事にお伺いする。
答弁
いわての森林づくり県民税は、本県の豊かな森林環境を次の世代に良好な状態で引き継いでいくことを目的に、森林環境保全に関する施策に要する費用に充てるものとし、公益的機能の高い森林へ誘導する間伐や、地域住民等が取り組む森林づくり活動の支援、森林環境保全の理解醸成などに取り組んでいるところ。
県民税については現在、令和2年度を終期とする第3期の取組を進めているところである。
第3期終了後の県民税のあり方については、今月から事業評価委員会で検討を開始していただいており、今後、県民や市町村等を対象に県民税に関するアンケート調査を実施するほか、県民や関係団体等の意見を直接伺う県民懇談会を県内4か所で開催し、これらを踏まえて、年度末を目途に提言を取りまとめていただく予定である。
県民税のあり方については、その使途も含め、県民の皆様をはじめ、県議会、市町村の御意見なども広くお伺いしながら、検討を進めていく。
3.地場産業の振興と雇用の拡大について
本県は、18年連続で人口減少の状況が続いている。
県では、2015年10月に「岩手県人口ビジョン」を策定し、自然減は若年女性の減少と出生率の低迷が原因であり、社会減は、進学期、就職期の若者の転出による影響が大きく、特に就職期の女性の転出が多い傾向があると分析している。
近年の岩手県の有効求人倍率が1倍を超え、雇用の量は確保されている中で、岩手県から東京圏に向かう若者が増加し、社会減となっている状況を食い止めるには、質の高い雇用を確保していく必要がある。
① 医療機器関連産業の振興について
ヘルスケア産業は、健康志向の高まりや高齢化等によって、今後も成長が見込まれる分野であると考えている。
ヘルスケア産業は、一般的には健康増進から医療、介護・福祉など多岐にわたるサービス産業と、これらのサービスに使用される様々な機器を製造する製造業を包括するものと言われており、中でも医療機器関連では、県内でも様々な動きがあると承知しているところだ。
このような中、県でも医療機器関連産業については、自動車・半導体関連産業に次ぐ、ものづくり産業の柱として位置付け、ヘルスケア産業集積拠点事業として、国から事業費の半分の交付を受け、県工業技術センターの敷地内に総工費約13億円で医療機器関連企業などが入居する貸研究室を整備しようとしている。
地元企業は下請型の企業が多い中、研究開発に取り組む高付加価値型の企業が集積する拠点を整備することは、研究者や技術者を含めた若者の育成・定着のみならず、産業に厚みを持たせることにつながるものと大いに期待しているところだ。
県では、県内医療機器関連産業の現状と今後の展望をどのように認識しているのだろうか。
また、この産業における女性活躍のチャンスをどのように捉えているのかお伺いする。
答弁
県ではこれまで、産業支援機関等と連携して、コーディネーター派遣をはじめ、さまざまな支援に取り組んできた結果、医療機器製造業の登録企業数は、平成25年度末の11社が、平成31年3月末時点では22社と大幅に増加し、また、医療機器生産金額は、平成24年の218億円が、平成29年には309億円と、40%以上増加するなど、本県医療機器関連産業は着実に成長してきているところ。
現在、県内企業が、大学、金融機関、産業支援機関等と連携して医療機器関連のクラスターを形成し、拡大が見込まれる世界市場への参入を見据えた新たな製品・サービスの開発に取り組み始めたところであり、今後更なる成長が見込まれる。
県としては、これらの取組を引き続き支援するとともに、現在整備を進めている貸研究所を活用し、製品や技術の共同研究等を支援していく。
また、本県医療機器関連産業は、ものづくり産業の中でも女性従業員の割合が高く、研究開発や設計などの部門においても女性が活躍しており、働きやすい環境も整っていることから、女性が活躍できる産業としても期待している。
県では、先ほど申し上げたさまざまな企業支援などが、女性が活躍する場の拡大にもつながるよう、医療機器関連産業の更なる成長を支援していく。
② 伝統工芸品産業の振興について
(1)伝統的工芸品産業の製造品出荷額等について
岩手県の工業統計によると、平成28年の本県の伝統的工芸品産業の製造品出荷額は31.4億円(前年比95.3%)となり、5年ぶりに減少した。
品目別に見ると、南部鉄器が分類される「その他の銑鉄鋳物」は25億5千万円と5年ぶりの減少、岩谷堂箪笥が分類される「漆器製家具」が5億円と3年ぶりの増加、秀衡塗と浄法寺塗が分類される「漆器製台所・食卓用品」は9千万円と2年連続で減少となっている。
また、ジェトロ盛岡貿易情報センターの「岩手の貿易」によると、平成29年の南部鉄器をはじめとする工芸品の輸出額は、3億4千万円と3年連続で減少しており、特に南部鉄器の北米向けの輸出額の減少が顕著となっている。
そこで、伝統的工芸品産業の製造品出荷額と輸出額が減少している要因と今後の対応について伺いたい。
答弁
本県の伝統的工芸品産業の製造品出荷額の減少は、ライフスタイルの変化や、安価な生活用品の普及、海外からの輸入品の増加などによる国内需要の低迷と輸出額の減少が主な要因と捉えているところ。
また、輸出額の減少については、輸出額のほとんどが南部鉄器によるものであるが、平成22年の上海万博出展を契機とした需要の高まりが落ち着いてきたことや、北米における大口の取引先との取引の中断が大きく影響しているものと捉えている。
今後の対応については、国内需要の低迷には、引き続き全国の物産展や工芸品の展示販売会を通じた販路の拡大に取り組むとともに、購買層を拡大するため、本年11月に開催するKOUGEI EXPO IN IWATE(こうげい えくすぽ いん いわて)をはじめ各種イベントにおいて、消費者に伝統的工芸品をとり入れた日常生活の豊かさを感じてもらう機会を提供するなど、本県の伝統的工芸品の需要の拡大に取り組んでいく。
また、輸出の減少には、海外事務所を通じた企業の販路開拓の支援をはじめ、海外の見本市や商談会への出展やバイヤーの招聘などにより、経済成長の続く新興国や富裕層の多い先進国の市場開拓に取り組んでいく。
(2)時代のニーズに合った製品展開と後継者の育成について
また、いわての伝統的な文化・生活に根ざしてきた伝統的工芸品産業は、岩手の大事な地場産業の一つであり、次世代に伝統的工芸品産業をしっかり継承していくため、現代のライフスタイルに合ったものづくりや伝統的工芸品産業を担う人づくりが重要であると考えている。
今年、11月の全国の伝統的工芸品が一堂に会する『KOUGEI EXPO IN IWATE』は、未来に向けた伝統的工芸品の魅力発信や、次代を担う若者の理解促進を図ることを目的に開催されるが、この大会を契機に、時代のニーズに合った製品展開と後継者の育成をどのように図っていくのかお伺いする。
答弁
KOUGEI EXPO IN IWATE(こうげい えくすぽ いん いわて)では、伝統的工芸品を生かしたライフスタイルの提案や、若い世代の伝統的工芸品の理解促進を図るための職人の実演や参加者の製作体験などを予定しており、時代のニーズに合った製品展開や後継者の育成につなげる貴重な機会と考えているところ。
県としては、新たな製品展開のため、今年度「岩手県伝統工芸産業アドバイザー」を設置し、異業種とのコラボ商品の開発やブランド展開などの支援をしているところであり、工芸品関連の事業者の技術力・デザイン力の高度化を図り、時代のニーズに合った製品展開を促進していく。
後継者の育成については、市町村や産地組合が行う人材育成の支援や、産業支援機関と連携したセミナー等に取り組んできたところであり、今年度は県北地域の漆器工房等において、伝統的な技術や技法を体験する機会として、県内外の大学生や専門学校生を対象としたインターンシップを実施することとしている。
また、KOUGEI EXPO IN IWATE(こうげい えくすぽ いん いわて)においては、県内の小中高校生の大会見学も計画しているところであり、伝統的工芸品への理解と関心を高める機会にしたいと考えている。
こうした取組を大会のレガシーとして更に発展させていくことで、伝統的工芸品産業の振興につなげていく。
4.スポーツを通じた地域振興について
① 地域の活力につながるスポーツの推進について
少子高齢化社会、人口減少の顕在化などが原因となる国内経済の低迷期を迎える中、地域を活気づけ、地域人口を増やす必要があり、「定住人口」「移住人口」「交流人口」などの増加施策が求められている。
その中でも「交流人口」の増加は「地域インバウンドの増加」による経済効果も見込める「スポーツを通じた地域振興」の促進が重要だと提言してきた。
従前の「スポーツ」は教育の一環として、また健康づくりの一環として位置付けられてきたものから、今では「スポーツ観光」として経済成長産業の一つとしても位置付けられている。
私はこれまでも、トレイルランニング等いわての雄大な自然を活用したスポーツアクティビティによる、いわてらしいスポーツツーリズムにもっと力を入れるべきと提言してきた。
県では、 スポーツアクティビティを通じた交流人口の拡大による地域活性化を図るため、平成30年度に岩手の山・川・海・湖を生かしたスポーツアクティビティの創出に向けた可能性調査を全市町村対象に実施しているが、これら調査結果の所感も含め、地域の活力につながるスポーツの推進やスポーツツーリズムを具体的にどう展開していくのかお伺いする。
答弁
本県は2つの国立公園を有し、また、四季それぞれが恵み豊かであることから、こうした全国に誇れる優れた自然環境を生かしたスポーツアクティビティ、スポーツツーリズムの展開は様々な可能性を有していると認識している。
そうしたことから、県内の観光・経済団体、スポーツ関係団体、大学、報道機関および行政で組織する「いわてスポーツコミッション」において、昨年度スポーツアクティビティの創出に向けた調査を実施したところであり、各市町村からはトレッキング、カヌー、サーフィン、スノーシュートレッキングなど、それぞれの地域特性を生かした様々な提案があり、改めて、本県が数多くのスポーツ資源を有しており、これを市町村等と連携して活用していくことで、地域の活力につながる可能性があると感じている。
今年度はこの調査結果を踏まえ、今後のスポーツアクティビティの活用につながる実証事業として、NPOや地域団体などと連携し、地域住民と協働しながら市町村と共にアクティビティを楽しめるモデルを作り上げることとしている。
今後においては、こうしたモデルを参考にしながら県内各地において、それぞれの優良な地域資源を活用したスポーツアクティビティが広く展開され、スポーツツーリズムの拡大につながっていくよう、「いわてスポーツコミッション」を中心に取組を進めていく。
② 盛岡南公園野球場(仮称)の整備と周辺地域の振興について
本県と盛岡市との共同で盛岡南公園野球場(仮称)の整備が進んでいる。
野球場の整備のみならず、公園周辺道路の環境整備も含めた地域振興の観点から取り組むべきと指摘してきた。
当地区には、盛岡市中央卸売市場、岩手流通センター、盛岡貨物ターミナル等が立地し、物流拠点が形成されているが、現在すでに渋滞が起きており、物流の大きな支障にもなっている状況で、さらには、岩手医科大学附属病院が矢巾町へ移転することから、アクセス性の向上も重要な課題となっている。
この新野球場は、2万人収容、駐車場1000台。
整備費の概算は約95億円。
運営・維持管理費は15年間で約25億円、1年平均で約1億6千万円とのこと。
今定例会では、盛岡南公園球技場をホームグラウンドとするいわてグルージャ盛岡から照明設備整備の請願が提出されており、プロスポーツ推進の観点からも設置が望まれるが、その設置費用は8億円とも聞いており、財源確保が課題とも感じている。
(1)スポーツを通じた地域振興について
これまでの「する・見る」のみのスポーツから「稼ぐ」スポーツへ、いわゆるスポーツを通じた地域振興をどのようにお考えか伺いたい。
答弁
スポーツは、県民にスポーツを「する・見る」といった「楽しみ」を与えるほか、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の成功や、本県ゆかりの選手の国内外での目覚ましい活躍が復興に取り組む県民の支えとなっているように、地域社会の活力を生み出す力になるなど、多面的な価値を有していると認識している。
「稼ぐ」スポーツについては、地域経済の潤いや活力につながるスポーツの活用ということと受け止めているが、 国においては、平成28年に公表した「スタジアム・アリーナ改革指針」において、
『スポーツの効果を生かした野球場などの施設を集客施設とし、人々の地域内交流に加えて、スポーツツーリズム等による地域間対流を促すことにより、まちのにぎわいを創出するなどの波及効果がある』
とし、様々な経済波及効果の中で、飲食、宿泊、観光等の周辺産業への波及効果も掲げているところ。
このようなことから、商工観光等の産業団体、大学、報道機関、行政等で組織する「いわてスポーツコミッション」を中心とし、国内外の大規模な大会やスポーツイベントの誘致に取り組んでいるところであり、それら大会等の開催市町村などと連携しながら、スポーツを生かした人的・経済的な交流を通じた地域振興につなげるよう取組を進めていきたい。
(2)周辺一体の総合的振興策について
盛岡南公園の施設整備にとどまらないその周辺地域一体の振興策に繋がる交通アクセスや都市計画に対し、県はどのように関わっていくのか伺いたい。
答弁
盛岡南公園に近接する盛南地域では、盛岡西バイパスの開通や沿道の土地開発の進展などに伴い、近年、交通量が増加しているが、今年9月に予定されている岩手医科大学付属病院の矢巾町への移転などにより、新たな交通需要が発生することも見込まれるところである。
こうした状況を踏まえ、県においては盛岡市や矢巾町などと連携し、盛岡広域圏における医療体系を支える道路ネットワークの整備について国へ要望してきたところであり、国においては昨年度、盛岡西バイパスを南進する国道4号盛岡南道路の事業化に向けた調査に着手したところ。
県としては、盛南地域における渋滞緩和や医療拠点などへのアクセス性の向上が大いに期待されるこの盛岡南道路の早期事業化に向けて、引き続き国に働きかけていくとともに、国の調査の進展に応じて、都市計画の決定手続による事業推進も考えられることから、国から協議がある場合には、速やかに対応していく。
※再質問
スポーツツーリズムの観点から野球場整備を行う、盛岡南公園地区をどのようにしていきたいのか伺う。
答弁
各施設については市営や、県と市で共同整備する形でいろいろな施設が整備されており、これから活用されていくと考えている。
先ほど答弁したように、スポーツというものが生み出すいろいろな力の中には、地域経済を含め地域社会に様々な活力を与えるという面もあり、一方で所管は違うが、周辺環境の整備という意味では、住民へのいろいろな配慮が必要となり、なかなか一部局では答えられない部分もあるが、「スポーツの力」に関してということで言えば、大規模な大会等の誘致やスポーツイベント等を活用しながら、その先にはそういった地域として国内外に認められるようになると、民間事業者の大きなスポーツビジネスの展開の場にもなってくるということも期待される。
これは、県が世界のひのき舞台で注目され、観光客や交流人口等が増えてくることにも繋がるので、その可能性については、それぞれの設置主体である市町村と県とで協議しながら展望をつくっていくことが重要と考えている。
5.岩手県動物愛護センター(仮称)について
動物愛護の教育や普及啓発、動物とのふれあい・体験が可能でいのちの大切さや適正飼養等を指導する機能を併せ持った拠点施設である動物愛護センター
。
昨今は「多頭飼育」「高齢者や生活困窮者等の動物飼育放棄」、「動物の高齢化及び飼主のいない猫の増加」等も岩手県でも課題となっている。
全国で設置していない都道府県は現在、岩手県を含めた3道県のみとなっている中、この度、本県と盛岡市との共同で岩手県動物愛護センター(仮称)の整備を検討していると伺っている。
本施設整備にあたり、動物の保護に取り組む団体等からは、「設置すればいいというのでなく、動物愛護の趣旨をしっかり踏まえた役割や仕組みづくりが大事」とのご意見もあった。
全国の自治体で殺処分された犬猫の数が2017年度、初めて5万匹を下回った一方で、動物愛護団体の活動が、殺処分減少の原動力になっている実態が浮かび上がっていた。
環境省によると、全国の自治体で殺処分された犬猫は、この5年で3分の1に減少。
これは、収容した犬猫を動物愛護団体に引き取ってもらういわゆる「団体譲渡」を行っている自治体が多く、犬猫の殺処分減は、愛護団体頼りとなっているとのこと。
① 関係者の連携による運営体制について
殺処分ゼロはもちろんのこと、いのちの大切さや共につながり支え合う県民・市民の心を育む拠点とするためには、獣医師を含めた職員や県内の動物愛護団体との連携等これまでに培ってきたノウハウの共有が継続して行うことのできる運営体制が重要と考えており、県の考えをお伺いする。
答弁
動物愛護センターについては、動物のいのちを尊重し、返還・譲渡の推進による殺処分ゼロを目指し、動物愛護の普及啓発により、いのちの大切さや共につながり支え合う心を育む拠点となる施設として、盛岡市と共同で設置する方向で検討を進めてきたところである。
昨年度盛岡市において、公民連携事業による盛岡市動物公園の再生事業の中で、動物愛護センターの設置を含めた検討が行われ、動物愛護センターについては、めざす姿や使命などが新たな動物公園で掲げる将来像と合致するため、動物公園内への設置は可能であるとの検討結果が県に示されたところであり、盛岡市と施設運営等の事業条件を調整したうえで、今後設立される予定の動物公園の運営組織との協議が必要となるものと考えている。
今後、運営体制を含めた具体的な事業条件について盛岡市と協議していく予定であるが、狂犬病予防法等の行政事務を行う公共施設として、責任を持って飼養動物を適切に管理できる体制とする必要があり、専門的な知識を持った獣医師等の配置や動物愛護団体やボランティア等の多様な主体との連携についても留意してまいりたいと考える。
② 岩手県動物愛護推進協議会からの意見について
岩手県動物愛護推進協議会では、盛岡市動物公園内に設置する場合、鳥獣動物と家庭に入っている動物を同じ敷地内に作るのは疫学や公衆衛生上かなり注意をしなくてはいけないとの意見も出しているが、その懸念について県としてどう捉えているか伺いたい。
答弁
平成30年7月に開催された県動物愛護推進協議会において一部の委員から、
『野生動物の施設とペットの施設を同じ敷地内に設置すると疫学上・公衆衛生上の扱いが難しい』
といった意見も出されているが、これらの課題については今後、施設の配置等を検討していく中で、診療・治療施設の専用化、職員の衛生管理の徹底などにより対応は可能と考えている。
動物愛護センターの設置にあたっては、動物愛護推進協議会の委員や専門家の方々の意見などを踏まえ、動物愛護思想や適正飼養に関する普及啓発を行う拠点としてふさわしいものとなるよう、引き続きその適切なあり方について検討していく。